体のだるさは肝臓の悲鳴?
肝臓は「沈黙の臓器」と言われているように、病気になっても自覚症状の出にくい病気で
す。そんな肝臓の小さな症状のひとつに「体がだるい」症状があります。
主な症状として
● 疲労感やだるさで目覚めが悪い
● 食後に襲う強烈な眠気
● 疲れやすくなった
などがある場合、肝臓の機能が低下している事があるので注意が必要です。
肝臓の機能が低下する原因は?
飲酒
肝臓は取り込まれた栄養分を、体内に必要な栄養分に換える「代謝」する器官でもあり、不要な物質を取り除く「解毒」も行う重要な器官です。
適量なお酒は体に良い効果をもたらすと言いますが、アルコールは肝臓にとっては異物であり、「毒」です。肝臓は取り込まれたアルコールを分解、解毒しようと一生懸命に働きます。
肝臓がアルコールを分解する過程で活性酸素が発生し細胞を傷つけます。したがって無理な飲酒を続けると、次第に肝臓の細胞は壊され、肝硬変へと進行します。
食べ過ぎ
肝臓は栄養を「代謝」する器官なので、食べ過ぎると肝臓が休むことなく働く事になり、肝臓の疲れにつながります。
また、食べ過ぎや飲み過ぎで摂取される過剰な脂質や糖分は肝臓で中性脂肪に変化します。
中性脂肪が肝臓に溜まると、いわゆる「脂肪肝」と呼ばれる状態になります。
ストレス
精神的なストレスは体内に活性酸素を増加させる事が知られています。
活性酸素の力は強く、幹細胞やその中にあるDNAまで傷つけ肝機能を低下させます。
またストレスの他に喫煙も活性酸素を増加させる事が知られています。
なぜ肝機能の低下で体がだるく感じるのか
肝臓の役割である「代謝」「解毒作用」「神経への作用」の点からみてみましょう。
肝臓は食事から摂取した栄養素をエネルギーに変えたり、保存したりする「代謝」機能を担っています。
エネルギーは生命活動として必要不可欠なものです。ですのでエネルギー不足は疲労に直結します。
体内で最も利用しやすいエネルギーはブドウ糖です。
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肝臓はブドウ糖が各細胞で利用できるように、血液中の量を調節しており、ブドウ糖は余るとグリコーゲンと言う物質に変えて貯蔵します。
しかし、暴飲暴食でブドウ糖が過剰になると肝臓は「中性脂肪」として蓄えはじめます。
肝細胞は中性脂肪で満たされると、やがて「脂肪肝」になり、肝機能の低下につながります。
「脂肪肝」は痛み等の自覚症状は無いですが、いわゆる「ドロドロ血」と言う状態になっており、血流が悪くなっています。
そのため、全身に酸素と栄養分が行き届かず、倦怠感の症状が出ることがあります。
また、肝機能が低下すると、胆汁酸が減少します。
これは、肝臓での胆汁酸の合成が正常に行われなくなるためです。
胆汁酸は、腸で溶けない栄養素の吸収を行なっており、例えば脂肪酸や脂溶性ビタミンなどです。脂溶性のビタミンには抗酸化作用をもつビタミンAやビタミンDがあります。
肝臓は活性酸素が多く発生し、細胞が傷つけられる事の多い器官です。抗酸化物質はそのダメージから守ってくれる働きがあります。
しかし、肝機能の低下により胆汁酸が減少するとそれらの栄養素も吸収できなくなるので、さらに肝臓がダメージを受ける悪循環となります。
有害物質は血液を介して肝臓に運ばれてきます。
そして、肝臓で毒性の低い物質に変え体外に排出されやすくします。これが解毒作用です。
有害物質は直接的に摂取している事もあり、例えば食品中の添加物や細菌、またはウイルスの生産物、または薬に含まれている化学物質などです。これらを肝臓は濾過し、無害化します。
しかし肝機能が低下すると、本来の有害物質の処理が進みにくくなり、全身に疲れやだるさなどの症状が出て行きます。
肝臓は脳と神経細胞をつなぐ神経伝達物質の合成にもう関わっており、例えばドーパミンなどの物質合成に関与しています。
これらの物質には精神的な落ち込みを緩和し、高揚させる作用があるため疲れを感じにくくしてくれます。
実際に肝臓の疾患や機能低下により、副腎皮質ホルモン放出ホルモンの分泌が低下し、疲労感に影響するという事も知られています。
生活習慣を見直して肝機能の改善を
肝臓は、大量の仕事をこなし負担が多い反面、回復力が大きい事が知られています。
食事を見直すだけでも負担を軽減する事が可能です。
疲れている時のアルコールは厳禁です。
そして食べ過ぎだけでなく、早食いや就寝前の食事も肝臓に負担をかけます。
また、適量な食事を摂っていても糖質ばかり摂りすぎてしまうと、脂肪肝を招きます。
糖質を減らす代わりに、タンパク質を摂るようにするのがおすすめです。
タンパク質は、肝臓の再生や機能をサポートする役割があります。
鶏肉や魚、豆類などは低脂肪高タンパクの食品です。
食品の添加物は肝臓での解毒対象となるので、疲れを感じている時はなるべく控えた方が良いでしょう。
肝臓はよく働くぶん、酸素や酵素などの消費が激しい臓器です。
そのため、酸素や栄養素を運んで来るのに大量の血液を必要とします。
すなわち、体内の血液循環を良くすることが大切になってきます。
肝臓は体を横にするだけで、血流量が数十パーセントも増す事が知られています。
食後に横になって休むことで、新鮮な血液をたっぷり送る事ができ、代謝のサポートになります。
また睡眠は体のメンテナンスの時間でもあります、
睡眠中はエネルギー消費も抑えられるため、代謝活動も最小限に済み、肝臓の負担を軽減させます。
ストレスは活性酸素を増やし、肝臓などの細胞を傷つけます。
また人は、過度なストレスを受けると自律神経が乱れ、交感神経の働きを活発にします。
すると、拮抗関係にある副交感神経の働きを抑制してしまいます。
肝臓の働きをコントロールしているのは副交感神経なので、結果的に肝機能も低下してしまいます。
また、交感神経は体を緊張状態にし、血管を収縮する作用があるので、内臓への血流量を低下させてしまいます。
すると、いくら体を休めていても十分な血液が供給されずに、肝臓の機能を妨げてしまいます。
このように、ストレスはできるだけ軽減させた方が、肝臓のケアにつながります。
軽い運動や趣味に打ち込むなど、自分なりの解消法で軽減してみましょう。
出典
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
日本医協学院発行
健康管理士向け教本より